振り返ってみて
「振り返って」と題して、
このコンサートを想ってくださっていても
実際には来られなかったという方々のために。
そして、この日を共にしてくださった方には
私がヴァイオリンを弾きながら何を想っていたのかも、
ちょっと聞いてくださいね。
~2020年の大晦日の朝焼け。
筑波大入院の年越し。この写真がコンサートのチラシのイメージの元~
まずはコンサート全体について。
一番実現したかったことは、
今の社会(と言っても、身の回りの方々)の息苦しさ、
未来への不安など様々なストレスを抱えている状況を
ほんの一時の音楽ででも、全て忘れて
希望を持てる時間を共にすること。
そのためには、現状への祈りを通ってから、
希望へと導きたいと願っていました。
プログラムは、
1曲目の エルガー愛の挨拶は、
文字通り会場のお客様へのウエルカムのご挨拶として。
親愛なる、、、という気持ちを、
ようこそというメッセージを込めて。
2曲目 ドヴォルザーク「我が母の教えたまいし歌」は
誰にとっても大切な母の存在を改めて想い
個人的な感情を普遍的な(全体的な)感情へと統合、
共有できるようにと願って。
3曲目 ロンドンデリーは、懐かしい故郷を想う歌として。
ダニーボーイの歌詞は、
戦場へ送り出す息子への母の切ない気持ちが歌われますが、
今の状況では一切戦争を連想していただきたくなかったので、
今回は「懐かしさ」にフォーカスしたいと願って演奏。
4曲目ドビュッシー「月の光」は、二人で何度も弾いた曲。
自然描写の音楽に、月に想う熱い心を乗せて、
前半でもっともリラックスしていただきたいと願って演奏。
ここまで全てゆっくりの静かな作品ばかり。
しかし、演奏会のプログラムとして通して弾いてみると、
意外にこれが難しい。
簡単な曲ばかりのようで、
これだけゆっくりの作品ばかりを並べると、
別の難しさが生じるのです。
発散する曲がなく、ずっと繊細な世界に神経を配る。
5曲目 カッチーニアヴェ・マリア。
ヴァイオリンのカデンツ付のドラマチックな編曲。
ここで初めて悩み苦しみの感情を表に出す。
心の底から祈る という気持ちで。
(ここから弾く方は楽になる)
6曲目 ラフマニノフ作曲クライスラー編曲
「パガニーニの主題による狂詩曲より第18変奏」。
二つ前のブログにも記したように
この作品はウクライナを想って演奏。
今は戦場となり、恐怖と悲しみに満ちた灰色の地が
いつの日か青空の元、
黄色の小麦畑、ひまわりの咲き乱れる
天国のような平和を取り戻すことを強く願って。
7曲目 相馬邦子さんの「祈り~Hoffnung希望」初演
この作品は、普遍的なメッセージを携えて、
全ての人に自分の人生を生きること願って。
まずはそれを自分に言い聞かせながら。
最後の音はまるで天の岩戸を自分で開けるように!
天から光が降り注ぐようにとイメージ。
でも、十分には楽器が鳴らなかったなあ。。
後半ドホナーニのクインテット。
secondヴァイオリン担当だったので、
ほぼ和声の係。
目立つことはほとんどなく、裏方に回り、
今はファーストと一緒、次はチェロと一緒に動く、
次の瞬間はヴィオラとハモる
などなど弾くことよりも頭を働かせ、心を寄せて。
第4楽章の最後、
ピアノがテーマをフォルテで奏で、
弦は重音を弾く箇所の軋んだ和音は、
私はいつも街中の教会の鐘が鳴っているような映像が浮かんでいました。
戦いから戻った凱旋行進を称える祝福の鐘。
戻って来れた、還って来てくれた喜びの鐘の音。
一番最後はアーメン終止と呼ばれるスタイル。
祈りが成就しますように。
神の御心が叶いますようにという意味を
作曲家が込めて書いたであろう終わり方。
実に力強いメッセージ。
~同じく筑波大10階西病棟の朝焼け。
ここから出られる日はいつだろうか、、、と、
まだどうなるかわからなかった不安なあの日。
それも懐かしい。朝焼けにはずいぶん力をいただきました。~
こう見ると、自画自賛ながらもよくできた配列のプログラムで、
優しく迎え、静かに心寄せながら曲を進め、
ようやく心の内を語り始め、
相馬さんの作品がプログラムの中心で、
最も強いメッセージを送る。
その後は仲間との楽しい音楽で
会場の皆様と生きる喜びを分かち合う。
アンコールの1曲目はマスカーニ作曲「カバレリアルスティカーナ」より間奏曲。
これも祈りの曲。
弦楽四重奏のみで始まり、
途中からピアノが入り、
後半私はオブリガートで天上から見守る天使の役割。
2曲目は皆知っているドヴォルザークの「ユーモレスク」
悲しみも喜びもあってこその人生を肯定する。
郷愁も感じる温かい作品。
そんなプログラムでした。
続きはまた明日、あるいは明後日にでも。
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