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2019年9月

2019年9月26日 (木)

振り返り

昨日は先生方の演奏と全体についてだったので、

今日は自分自身について考えてみる。

やりっぱなしでは成長はない。

 

新しいことに挑戦することは好きです。

同じことを繰り返すのでは発展はないと考える。

(練習は反復が大事だけれど)

なので、毎年「今年はこういうチャレンジを!」と定めます。

今回はプロデューサーを初体験。

しかも自分も演奏しながらの一人二役。

 

主催者としての振り返りは昨晩書いたので、

今日は主に自分の演奏についての反省です。

いつものことながら、、、準備が遅い!

たいてい本番直前でないと、演奏の全体像が見えてこない私。

毎回懲りない。。。

 

本番前の工夫した練習と、

それを積み重ねる時間の長さをいつもやっていれば、

もっと遠いところに行けるだろうに、、、と思うのに。

介護があり、ある程度きれいな家に住むのでないと落ち着かない私は(超綺麗好きの母に育てられ)、それらをそうそう手を抜けない。

まあ欲張りというものです。

 

バッハの3番プレリュードは、ずっとリュートのイメージを持っていました。

リュートとは現代で言うならちょっとギターに似た楽器。

実はバッハはこの3番のプレリュードをリュートにも編曲(BWV1006a)しており(最近知った)、

さらにはカンタータにも編曲して3回使っている。

それほどお気に入りだったと言えるでしょう。

 

昔九州交響楽団に在籍していた際に何度か演奏を聴いたギタリストの山下和仁氏の

バッハ無伴奏CD20代の終わりに愛聴していて、

特にパルティータ3番はヴァイオリンの他のCDよりも好きだったくらい。

しかし、長い間聴くこともなく、今回1度だけ棚から引っ張り出して再会。

懐かしい爽やかさ♪

どこまでも続く高原や野原、風と光とたわむれ、

草の上に腰を下ろし、つまびくギターの伸びやかな音色。

Dsc_3331

なので当初はもっと速くテンポを設定。

でもレッスンに伺うと先生からは「教会のオルガンのように」とアドバイスいただく。

たしかに、バッハは見事なオルガニストで多くの教会音楽を書いており、

正しいご提案です。

でも、染みついたイメージは拭い去れず、

最後の最後までどう弾くか悩み続けていました。

 

土曜日の会場リハーサルで先生の太く輝かしい音を聴いて、

ようやく今回はリュートではなく教会の響きでと思えるようになった。

言葉よりも音の方が雄弁です。

かといって、私が先生のような音が出せる訳ではないけれど。

 

大変なクラシック愛好家で、かつては物理学の第一線で活躍されていらっしゃった方から

「演奏も物理も似ていますよね」と言われたことがある。

「学会で人と同じことを言っても誰も相手にしない。

初めての発見や研究成果を発表してこそ意味がある」という趣旨のことを伺ったことがあります。

 

そうなんです。

正しいことは偉大な先人がやりつくしてくれている。

その足元にも及ばなくとも、

自分が感じている唯一のものを表現して届けたいから弾きたい。

バッハは即興の名手だったので、新しい表現もきっと受け入れてくれるはず。

 

今回の種明かしとしては、

最初の長い上行音形の箇所は始めからF(フォルテ)となっているけれど、

私はP(ピアノ)から始め息の長いクレッシェンドをかける。

 

2回あるバリオラージュ(特殊な移弦を繰り返して和音のような効果になる)

2回目に入る前は、クレッシェンドにしてみる。

だれもやっていないアイディア!

バッハはオルガンやチェンバロの2段鍵盤のように、

同じ音形を2回使う際に1回目はF,

2回目はPでと指示しているけれど、

私は同じことをするよりもこちらの方が構成として面白いと考えた。

 

最後はダウン(下げ弓)で終わるボウイングがついているけれども、

私はアップ(上げ弓)で終わりたい。

曲の冒頭は八分休符で一瞬のエネルギーのためがあって、

いきなり天から音が舞い降りてくる。

曲の最後は同じく天に昇っていくエネルギーが欲しいと考えた。

最後の1小節のメッセージは「この音、天まで届け!」と思って弾いていました。

Dsc_3332

まあ実際にそのようにできたかどうかは定かではありませんが、

何か所かのオリジナル解釈を話すとこういう感じです。

他も言い出したらきりないし、種明かししすぎるのもね、、、と思うのでこの辺で。

 

しかし、練習の仕方の発見もたくさんありました。

どこがなぜ弾きにくいのかを考えて、

その理由をもとにグループ分けをしての反復練習を始めたのが、実は本番10日前。(>_<)

たださらっているだけでは間に合わない!

 

学生の時は時間が全て自分のものだったので、

やみくものただただがむしゃら練習していましたが(つまりアホな練習)

さすがに歳とって、しかも時間がごく限られていると、

無い知恵絞るしかありません。

 

でも、今回発見した練習方法、楽譜の読み方はこれから使える!

もう少し早く弾けるようになり、

もっと深く表現するための時間もできそうです♪

せっかく中村恵さんの勉強会で、長く楽譜の分析研究を学んでいるのだから。

スコアを分析できることは私の強みになっているからこそ、

オリジナル解釈で演奏したいのです。

 

本番前は久しぶりに本当に怖かった。

先生方の演奏会を貶めるような演奏になったら、、、と

なんだか責任重大なオープニングの気分。

1曲目にいきなり高速道路を走るようなこの曲を選んだのは冒険がありました。

最初は自分が落ち着ける楽な曲で始めた方がプレッシャーが少ない。

 

そして、出来上がりが遅いことの不安。

いつもそれでも何とかするけれど、今回はバッハ!

16分音符だけが続いていく4Pは、ほぼビブラートもなく、

素の音で勝負しないといけない。ひえ~~。。

 

ビブラートかけるのは、オルガンのペダル音に当たる個所が続く1拍めと、

これぞ!の部分のみ。

音程練習はシビアにビブラートなしでやった方が、厳しく追及できる。

毎日自分の今の姿を突き付けられて「昨日よりは少しましになった、、」と慰めながら

後何日?とカレンダーを見る日々。

 

前から一応下ごしらえはしていたとはいえ、

本格的には9月に入ってからだったしね。

夫も「間に合うかな?」と。

いつも家族に心配かけながら本番に向かっています。。

 

 

そして、土曜日の会場リハーサルの日、

私は一人930から会場で練習を始め、

肩を回す、下に降りてパンでお昼ご飯にする以外の時間は4時間ずっと弾きっぱなし。

1245に先生と長明さんが来られた時はすでに疲れていて、

お二人に聴いていただいた演奏はボロボロ。。。

 

「私下手になってる!?」ととても不安に(>_<)

早い話、疲れて集中力を欠いていただけだけれど、

そんな状態を聴いていただくべきではありませんでした。

お蔭で不安が増してしまう。

きっと先生方もこの人大丈夫?と。ごめんなさい。

 

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~本番前、守谷の中にそば畑があることを発見。白い花が美しい。~

 

 

Mozartに関しては、先生と私はタイプが違うので(横に並べるのも不遜ですが)

なかなか一つの音楽にまとまらない。

人と弾くのは自分のイメージだけでは成り立たなく、

相手によって同じ曲でも弾き方、表現が毎回変わります。

 

 

私は渡邊先生の演奏は現代音楽のCDでは聴かせていただいたことはあっても、

実は本番は初めて。

どんな感じに演奏されるのかわからず、いろいろ迷っていました。

でも、その後のメンデルスゾーンを聴いて納得。

大きな情熱的な音楽はとても魅力的。

先生と一緒に本番ができるなんて、なんて幸せ♪

 

 

私はこの3年、渡邊先生の元で、

楽器の持ち方、弓の持ち方、左手の落し方、ボウイング、

右手の細かなテクニックについて一から学びなおしてきました。

まだまだできないこともありますが、

教えていただいたことが少しずつ実を結んでいる実感を持っています。

私に成長があるとしたら、渡邊篤子先生のお陰なのです。

自分のことは気が付かないこと、盲点が多く、客観的にコメントいただけるのは一人で勉強するのの何倍も早く進めます。

 

前から聴いてくださっているお客様で趣味でヴァイオリンをなさっている方が、

「森さん 楽器替えましたか?」と聞いてくださったとか。

ガット弦に替えたのが大きな要因だと思われますが、

一つ一つの音の発音の注意し、前よりもしっかり音を出すことを心掛けるようになり、

私自身アルスで久しぶりに弾いてみて、鳴りが違うと感じました。

 

 

矢崎先生、菅野先生からも「スケールの大きい音楽だった」との

温かい労いの言葉をいただき、嬉しかった。

実際には、あそこで音がかすれた、音程が微妙だった、

少々ひるんだ箇所があったなどいろいろ不備もありましたが、

また頑張ろう!と思います。

 

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私が弾き始める前に会場に響いた「あ~♪」の声。

あれはうちの娘でした。

介護の付き添いでお願いしたお姉さんによると

母が登場すると娘はすごく嬉しそうだったとか。

終演後もとってもハッピーな笑顔ですり寄って来てくれました。

 

途中20分ほど寝てしまったそうですが、

席を立つことなく大人しく演奏を聴けたようで、

きっと母と演奏会を見守ってくれていたのだと思います。

私も彼女の「あ~」に「居るな♪」と思って、弾き始める前に気持ちが和みました。

練習を散々聴かされていた娘も暗譜していたはずで、

きっと誰よりも母を応援してくれていたことでしょう。

 

 

言葉がない子ですが、感性はとても豊かです。

心配はたくさんあっても、笑顔に癒されています。

優しくサポートしてくれる夫にも感謝。

どこを向いても感謝しかないと思う本番を振り返る日々。

本番は究極の時間です。

 

2019年9月25日 (水)

有難いご縁に感謝を!

秋分の日の23日月曜日。

今年の主催コンサートをお蔭様で盛況のうちに終えることが出来ました。

 

今年は国際的に活躍される一流奏者を招いて、などという恐れ多い企画。

私の手作りの小さなコンサートにこんな豪華なゲストの方々。

自分も最初の2曲+アンコールに参加するとはいえ、

まずは失礼なくおもてなしできるのかどうか?

そしてご迷惑をかけないで弾けるかどうか、、、の緊張感を持って当日を迎えました。

 

~

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~アンコールは、マスカーニ作曲 オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲~

 

 

しかし今回は、前日までに招待券、スタッフを含めて満席の100席が埋まっており、

そのことは気が楽な要素。

なので、倉庫から椅子を追加しなきゃ、

もしかしたら立ち観さえ出るかも?とか勝手にワクワクしてましたが、

結局当日券は1枚のみ。

まあ人生そんなものですよね。(笑)

 

しかも解説には渡邊先生のご主人様でいらっしゃる

指揮者の矢崎彦太郎先生にお願いできるという有り得ない豪華さ!

演奏も大迫力の熱演の数々で、圧倒されました!

まずは先生方の演奏を。

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3曲目から渡邊篤子先生と長明康郎氏によるデュオ。

ある方の感想は、「お二人が歌っているようだった」ともあり、

ある方は「やりあっている白熱感が」とあり、

様々な表情を見せていただいた迫真のデュオを堪能しました。

 

私は特にマルティヌーが素晴らしく忘れられません。

技術的にも高度な内容ながらも、テーマがわかりやすく、

近現代にしては意外に初めて聴いても面白く楽しめる作品でした。

 

特に圧巻のチェロのカデンツ。

これぞ長明さん!の演奏。

あのリコッシェ(飛び弓)の切れ味!

どこをとってもクリアな音。

そしてどこまでも深い音。

渾身の演奏とはこういうものか!と驚きの内容。

 

渡邊先生も、開演30分前までデュオのリハーサルを続けて、

お昼ごはんなしで本番突入にもかかわらず、

太く輝きのある音を放っていらっしゃって、

グレイヘアの年齢にはとても思えない迫力の演奏に驚きでした。

友人からは先生の凛とした素敵なお姿に「モデルさんのよう!」と感嘆の声も。

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でも何といっても心を動かされたのはメインのメンデルスゾーンのピアノトリオ第2番。

2年前に私も弾いた大好きなこの曲のことは隅から隅まで知っているので、

期待はマックスに。

ここからトリオ・ルテシアの菅野潤先生の登場。

私は譜めくりを務めることになり、先生のお傍で音楽の息遣いを感じることができて、

もう~シビレていました!

 

素晴らしい音質と柔らかなタッチ、リズムの取り方、自然でいて情熱的な流れ。

トリオは傍で鳴っているピアノ中心に聴いていましたが

もう素敵で素敵で!

終楽章の最後に感動して譜めくりを忘れてしまい、

慌てて2枚めくってしまうという失態。。

菅野先生はお姿通りのとても温和な方で、「問題ありませんでしたよ」

なんてフォローしてくださいましたが、

大変ご迷惑をおかけしてしまいました。。

 

トリオは初回リハーサルの土曜日から譜めくりをさせていただいたので、

どんな風にリハーサルを進め、本番はどうなるのか?も見ることが出来て幸運!

国際的に活躍される演奏家のリハーサルを見学できることなんて滅多にない。

それはそれは勉強になりとても有難い経験でした。

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なぜ今回の演奏会が実現したのかというと(前にも書きましたが)

昔九州交響団に居た頃ご一緒したチェロの長明さんとのご縁で

3年前に守谷でのピアノトリオが実現し、

その時に自分のヴァイオリンのことでご相談したら渡邊先生を紹介してくださった。

 

ならば今年は、お世話になっている渡邊先生と長明さんの演奏会を、というのが事の始まりです。

そこに、菅野先生も加わってくださって、

さらに矢崎先生もお話しくださることになり、、、とどんどんスケールが大きくなって

主催の私本人が驚いています。

音楽をやっている友人は皆驚いていたけれど、ホントそのとおり。

 

でも、演奏会って演奏家だけでは成り立たなく、

お客様がいないことには始まらない。

私のコンサートはいつも来て下さる常連の方ばかりで7割埋まります。

そこに、お友達を誘ってくれる友人が居て、

少しずつ少しずつ拡がって来ています。

 

今回の感想を聞くと、たくさんの方を誘ってくれた人たちが

どれほど楽しみにしてくれていたかが伝わって来て、

私も胸が熱くなりました。

その会場の期待と熱が、演奏家にさらにエネルギーを与えてくれて、

良い演奏が生まれるという循環に入ります。

先生方も「とても会場の雰囲気が良かった」と喜んでくださった。

会場の演奏者と聴衆が一緒に呼吸し、エネルギーがどんどん高まって行く。

 

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さらにそれだけではなく、裏方としてお手伝いくださる方が居ないと成り立たない。

今回自分の出番はさっさと終わるので、

なんでも自分でやってしまおうと最初は考えていました。

しかし、そんなの甘かった(>_<)

 

譜めくりをすることになって(自分で志願したんだけれど、、)

自分のGP後時間もないので会場準備もできない。

日頃のデュオコンサートなら配置は変わらないのでステージマネージャーはいらないけれど、

今回は編成が変わっていくためにステマネが必要だと気が付いたのは土曜日。(*_*)

プログラムは本番前日に練習しながらプリンターで印刷という遅さ。

何でもギリギリ。

全て後手に回りました。。

 

温暖化の暑さ、台風の心配で頭がおかしかったのか、いや緊張からか、

運営計画が今回完全に失敗していました。

急にスタッフをお願いして万全のサポートで支えてくれた朝コンの仲間、

野末あけみさん、結束寛子さん、奥田千春さんなしにはできないコンサートでした。

本当に本当にお世話になりありがとうございましたm(__)m

 

演奏してくださった先生方も、

会場を埋めてくれた友人の皆さんとそのお知り合いの方も、

スタッフで協力してくれた仲間も。

全ては有難いご縁でつながる輪のようだ、、、とただただ感謝の想いです。

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自分の演奏については、次に。

明日upできればと思います!

2019年9月 7日 (土)

9/23 和の響き

今年の主催コンサート、「和の響き」というタイトルなものだから、

和楽器も入るの?と聞かれることがあります。

イエ、、、。

令和の響き の方のニュアンス デス。

 

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コンサートのネーミングはチェロの長明さんが付けてくださったので、

まだ直接詳しくは聞けていませんが、

たとえば 令和になって新しい時代の とか、

和合する などの親密さも入っての意味ではないかと思います。
(推測でものを言ってすみませんm(__)m

でも、新しい時代に、新しいだけでなく今まで培ってきたものも融合して

更に進化を目指す そんなコンサートになりそうな予感です。

 

 

トリオ・ルテシアの「ルテシア」とは、古いパリの呼び名。

パリ在住の渡邊先生、菅野先生がいらっしゃるのでこの名前。

ルテシアの皆さまは久しぶりに集まって演奏してくださるようで、

きっと過去の演奏会の思い出などの懐かしさ温かさを湛えて

和やかに演奏してくださることと思います♪

 

Get-along

世界はどこの国を見てもポピュリズムの波が激しく、

自己主張が目に痛いほどですが、

だから余計にほっとできる安心を求めたくなるのかも。

音楽の世界も聴く人を圧倒させるような演奏よりも、

聞く人を包むこむ温かさ親密さが求められているような気がします。

 

前にも書いたことがありますが、

よく言っていただくのが「森さんのヴァイオリンを聴いて癒されたい、、」という言葉。

作曲家が真剣勝負なのは言うまでもなく、

弾く方も準備している最中は胃が痛くなるような気分になります。。

お客さまがコンサートに求められることと、

実は弾く側の状態はかなり離れているかもしれない。

 

もちろん、素晴らしい作品と共に毎日を過ごせる喜びや、

勉強できること自体を幸せに思うけれども、

いざ現実の自分の今に立ち返ると毎回この時点、

約2週間前辺りというのはとても辛い時期です。

理想と現実のギャップ、そして時間のリミットが迫って来ている焦り。

キャー!!という気分。

 

でも、何とかします!

いつも出来上がるのがとても遅い私。。

スイッチが入るのが遅い。

もっと余裕で早くに出来上がっていたいのですが、

まだああでもないこうでもない、、、ともがいています。(>_<)

 

しかし、先生方は私とは違って余裕です。

私が先生方のリハーサルを聴けるのは本番二日前なので、

その日までトリオ・ルテシアはどんな音なのか?の楽しみは取っておいています。

皆さま国際的に活躍されている百戦錬磨のベテランでいらっしゃるので、

今回のコンサートの成功は間違いなしです!

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さてプログラムは、というと、

オープニングのウェルカムにバッハの無伴奏パルティータ第3番のプレリュード。

6曲あるバッハの無伴奏の中で最も明るいエネルギーに溢れている楽章。

突然、空がひらけて音が天から舞い降りて来ます。

 

動きっぱなしの16分音符。全部で何個だったっけ?

4分の3拍子なので、1小節に16分音符が4×3.

そして小節数は?

最後の方で四分音符もあるので、

おおまかに1656個の音符たち、と申しておきましょう。

細かく動きまわる音たちは、旋回したり、直線的に登ったり、うねったり、

宙を駆け抜けます。

 

リズムパターンによって、和声の変化のポイントによって、

音のグループ分けを変えることで、エネルギーの流れ方が変わる。

そこは奏者の解釈で行く通りもの弾き方があるでしょう。

 

バッハの無伴奏のCDも多種類持っているので、時々聴いてみたりしていますが、

それよりも今読んでいるヤープ・シュレーダーの

「バッハ無伴奏ヴァイオリン作品を弾く バロック奏法の視点から」がとっても面白くて、

ヒントの山。

新しいことに出会って考えることは楽しすぎる。

 

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~プレリュード バッハの直筆譜。この流麗な線だけでも音楽が聞えてきそう~

 

 

バロック奏法には以前から興味はあり好んで聞いていますが、

自分はまだ使えていない。

わかっていないのに本番で¥実験するようでは聴いてくださる方に申し訳ないので

どんな具合になるかは当日までわかりませんが、試行錯誤しながら

話す、踊る、歌うのバロックの精神に少しでも近づけたらなあ、、、と

思い描いているところです。

 

天から音がやって来てまた天に帰っていく 

というストーリーだけは前から自分の中で決まっている。

でも、これ以上は言いません。

テンポは110くらいの予定。

あっという間の時間ににぎゅっと詰まった音符たち。

 

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~バロックとモダンの二つの楽器を使ってのプログラムだった8月朝コン アルスホールの様子。

とても素敵な響きでした~

 

 

 

次はモーツアルト ソナタKV331.

あれ?これってピアノソナタじゃなかった?

そうです。トルコ行進曲が終楽章に付いているピアノソナタのヴァイオリンデュオ編。

 

もちろん原曲には及びませんが、右手と左手(ピアノの)が近いこのソナタは

ヴァイオリン2本で弾くのも結構いい感じです。

先生と一緒に演奏させていただきますが、

二つのパートは入れ替わって旋律を担当するところも面白い。

1st(森)がメロディーのことが多いものの、

特に第2楽章のトリオ部分は頻繁に旋律を受け渡して入り組んでます。

 

このソナタを書いた頃のモーツァルトさんはどうしていたか?というと、

1783年6月16日に初めての子供が産まれ、

ならば実家に胸を張って報告!と赤ちゃんは乳母に預けて

7月から故郷ザルツブルグに妻のコンスタンツェと共に里帰りし、

12月にウイーンに戻ってみたら赤ん坊は8月には亡くなっていた、、、、と知る。

絶句。

 

私にはちょっと考えられないことだけれど、

当時の余裕のある家庭は、乳母が子供を育てるのが普通だったようです。

彼の時代は小さな子供が無事に成長するのは困難でした。

医学の発達も住居環境、衛生面、どこをとっても厳しい時代。

 

それにしても、モーツァルト夫妻も相当なショックだったのでは?と想像します。

そのせいか、私には第1楽章のテーマのシチリアーノが子守歌のように聴こえて来ます。

モーツァルトは、アンダンテ・グラツィオーソと指定しているだけですが。

(グラツィオーソとは「優雅に」という意味。

アンダンテはゆったりした歩みを表す速度の表示。

原曲の第1楽章には全部で6つの変奏と終曲で成っていますが、

今回演奏するヴァイオリンデュオ編の楽譜では、

第2変奏、第5変奏はカットされています。)

 

Photo_20190907222901

 

シチリアーノの話しに戻ると、、、

シチリアーノは古くは哀しみを表現するものであったそうで、

それを明るいイ長調で書いているあたり、モーツァルトらしく思う。

彼はごくまれにしか使わなかったシチリアーノ。

どの作品に使われているのかを知ると、ちょっとはっとするものがあります。

 

このテーマはまるで民謡か何かのように親しみやすい旋律で、

二つの楽器(左手と右手)は寄り添って動きます。

穏かに揺れるリズムは、揺りかごのよう。

3度で寄り添って動く二つの旋律は、

我が子の寝顔をのぞく若い夫婦のようにも思ってしまう。

 

テーマを「子守歌」と思った最初のきっかけは、

原曲の第3変奏が高音域なため、オルゴールのように聴こえたから。

調べてみたところ、この時期にはまだオルゴールはなかったようなので、

私の思い違いかな、、とは思うけれど。

しかしいつも、想像力は勝手に羽ばたいてしまうのです(^^♪

弾く方もオリジナルなイメージで弾いていますので、

聴く方もお一人お一人独自の世界の中で夢を膨らませていただければと思います!

 

第2楽章メヌエットのトリオ部分は、

ヴァイオリン編では前にも書いたように旋律を交代しますが、

原曲も右手と左手が交差して演奏。

それも観ていても面白い。

 

そして終楽章は、有名なトルコ行進曲。

ピアノを習っているお子さんたちが弾きたい曲リストに必ず入っているこの曲です。

この時代オスマン・トルコと緊張状態にあったハプスブルグ家。

敵とはいえ、東欧のエキゾチックな雰囲気はブームを呼んだそうで、

モーツアルトはこれ以外にも

オペラ「後宮からの誘拐」ではトルコを舞台とし、

ヴァイオリン協奏曲第5番の第3楽章も「トルコ風」。

気になって仕方がない。

いえインスピレーションを掻き立てられて仕方がない。

もちろんトルコへの強烈な風刺とも言えます。

この楽章もアレグレットなので速すぎず演奏しましょう。

 

私の出番はここで終わり。

後はゆっくり先生方の演奏を楽しませていただきます♪

ここまではバロックと古典の世界。

ここからは時間を飛んで近現代へ。

 

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~アルスホールの公園側入り口~

 

 

次のヴァイオリンとチェロのデュオ2曲はパリにちなんだ作曲家によるものです。

ラヴェルはパリで活躍した洗練されたパリジャン。

残っている写真の彼はとてもお洒落な紳士。

「音の色彩の魔術師」と異名を取る。

 

マルティヌーはチェコ出身でパリで学んだ作曲家。

実は私はこの作品は聴いたことがなく、、、

しかしIMSLPで楽譜は入手しました!

初めて聞けるのが楽しみです。

 

最初の2曲とは雰囲気がガラッと変わる。

古典からこの近現代へのタイムスリップは、

曲調からも演奏スタイルからも驚くほどのギャップがあります。

この絶妙なプログラミングで、生のコンサートのダイナミズムをお楽しみください。

 

渡邊先生と長明氏による高い集中力と安定感ある演奏で、

迫力あるヴァイオリン&チェロのデュオをお聴きいただけることと思います。

まずはラヴェルのヴァイオリンとチェロのためのソナタ。

そしてマルティヌーのヴァイオリンとチェロのためのデュオ第1番。

 

休憩後の後半は、メンデルスゾーンのピアノトリオ第2番。

4楽章ある大きなトリオは、聴きごたえ十分です。

ここからいよいよ菅野先生の登場。

私も2年前の12月に同じアルスでの「つくば朝のサロンコンサート」で

演奏したことがありますが、

とても素晴らしい未だに忘れられない作品です。

メンデルスゾーンの晩期に書かれたトリオには、

彼の人生が詰まっているようにも感じ、

特に終楽章は感動的です。

 

 

どの作品も弾く人によってイメージは異なり、

だからこそ生演奏は面白いのですが、

自分のイメージを捨てて目の前の演奏を楽しみたいと23日を待っています!

 

ちなみに、メンデルスゾーンは忘れ去られていたバッハを復刻させた人で、

プログラムは輪のように最初と最後がつながります。

パリを舞台の作品を間に挟み、

バッハをキーワードに結ばれるプログラム。

当日はスペシャルゲストのナビゲートが、

お客様をクラシック音楽の素晴らしい世界へと誘ってくださることでしょう。

どうぞお楽しみに!

 

「和の響き トリオ・ルテシアを迎えて」

2019年 9月23日(月・祝) 14時開演(13:30開場)

つくば文化会館2階 アルスホール

 

会場はつくばエクスプレスつくば駅 A1出口より徒歩3分。

研究学園都市つくばの緑あふれる公園に面したつくば文化会館。

1階にはカフェや図書館、ギャラリーもあり、

公園の奥にはプラネタリウムが楽しめるエキスポセンターも。

遠方からの方も、23日つくばの午後をいかがでしょうか?

 

お席のご予約は、当HPのお問合せフォームへ。

http://forest-note.com/

 

あるいは、下記店舗でもチケット取り扱っていただいております。

 

*ナチュロアロマチカ  守谷市久保ヶ丘2-5-18 ℡ 0297-46-2810

*ブティック・フラワー 守谷市松が丘2-6-2  ℡ 0297-46-0204

 

皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

 

 

2019年9月 2日 (月)

新学期の気持ち

 

あらっ よく考えたら私8月は2回しかブログを書かなかった?と

気が付いたのは一昨日。

日々宣伝作業に追われ、

それに暑さ疲れで夜はバタンキュー。

手が回っていなかったのかしら、、

 

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~夫が昨日 明野のひまわり(筑西市)を撮影して、

お土産に10本(¥600)買って来てくれました。

ゴッホのひまわりを思わせる八重(いやそれ以上の多弁)の花。

昨日が最終日でひまわり畑はブルドーザーに踏み倒されるそうで(*_*)

もったいないけれど毎年のことだそう。

今年のひまわりも土に戻って、来年また生まれ変わるのかな。

黄色は元気が出る色です♪~

 

 

Img_7980

 

 

最近、面白い出会いがいろいろありました。

自主企画コンサートを知ってもらおうと本番前にいろんなことを考えていると、

それに伴って変化が訪れます。

ちょっとした動きがきっかけとなり、

新しい出会いに嬉しくなったり、

人と話して自分の方向性を確認したり。

秋の入り口に、私も新たな気持ちで立っています。

 

 

9月に入り新学期といっても、

近所の小中学校は2学期制への変更に伴い、

後期はすでに始まっているようです。

でも私にとってはやっぱり新学期は9月から。

しみついているのですね。

練習時間があまり取れなかった8月を後にし、

さあしっかり音楽に向き合おうと思う私にとってのスタート。

 

 

Helios

 

 

先々週の金曜日、異業種交流会というものに初めて参加して参りました。

近所の戸頭にある「サムシングブルー」さんという結婚紹介所(介護紹介も始められて)が初めて企画された交流会。

男女の縁をつなぐ会社は、人の縁をつなぐプロでした!

 

 

個人事業主さんが集まる会で、

私のように細々とした活動をしている者は初心者の気分。

皆さん夢と希望と覚悟を語られ、

とても勉強になりました。

何よりその熱をいただいて私も頑張ろう!という気持ちがさらにアップ。

 

 

自宅周辺の自然からは癒しを与えてもらい、

出会う人からは生きるエネルギーをいただく。

今この地に居ることを有難く思ったひと時でした。

魅力度最下位の茨城ですが、そんなことない!と思う県民の一人です。

 

 

そして、6月からお世話になっている土浦市のヴィアンネ・ヴァイオリンファクトリーで、

楽器の調整もとても面白かった。

朝コンの弦楽器奏者の友人達からお名前は度々聞いていましたが、

私は学生時代以来ずっと通っていた工房があり、

長年のご縁はなかなか変えられない、、、。

でもちょっと覗いてみたくなり、

まずは練習用の弓の毛替えを頼んでみて、

きめ細かで丁寧な仕上げに納得。

 

 

その後本番用の弓もお願いし、

伺うたびに長話に洗脳され(笑)、

いえ、ヴァイオリンへの愛に圧倒され、

学ぶことが多くて面白く、今回はいよいよ本丸の楽器を差し出す。

 

 

 

この10年扱いやすいからという理由でナイロン弦を使っていましたが、

今回久しぶりにガット弦に交換。

それに伴い調整も。

先週木曜日は10:30~15:00までヴィアンネさんにお邪魔して、

話しをしながら楽器をピカピカに磨いてもらって見違えるように輝いています!

 

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~ガット弦のオリーブはこの緑色。久しぶり~。お帰りオリーブ♪~

 

 

ヴァイオリンの弦はいろんなものが売られていますが、

大きく分けて羊の腸を使う古くからあるガット弦と、

新素材のナイロン弦の2種類に分かれます。

 

 

音色はガットの方がもちろん良い。

しかし、湿気に弱くピッチが狂いやすい。

時には演奏中に切れるリスクも。なやましい~。

仕事として使うならナイロン弦が便利で、

でも芸術としての演奏を追求するならガット弦。

9/23「和の響き」コンサートにご出演いただく私の先生も、

もちろんガット弦を使っていらっしゃいます。

 

 

新しいタイプの弦の方が発音がいいのかと思っていましたが、

ガットの方が格段に発音がいいと聞き、

え~っ!それならガットに!と心は決まった。

ヴァイオリンに対する愛と情熱に溢れるヴィアンネさん(河内さん)の話しを伺っていると面白過ぎて、

滞在時間がとんでもなく長くなる。

 

 

木曜日は弾きながら調整ということだったので、

長時間滞在に供えて勝手にお昼のパンを二人分調達して訪問。

とことんこの楽器に魅了され研究している職人さん

いえ芸術家は楽器の話しだけでなく、

お互いの身の上話にまで広がった。

苦労したもの同士の空気があった。

 

 

ヴィアンネさんいわく、今の若い人のバリバリガシガシした弾き方でなく、

弓を軽くたくさん使う弦を響かせる奏法こそ、

ヴァイオリンの魅力を引き出すボウイングであること。

私このところ元弓エクササイズで、けっこうガシガシタイプになりつつあったので、

反省。。

 

 

もちろん曲にもよります。

いろんな弓使いができないといけない。

作品のエネルギーを伝えるためには、時には汚い音も畏れずにいる姿勢も必要だと思う。

けれども、ヴァイオリンの音に求められるのは何か?を改めて考えていました。

 

 

音楽は何のためにある?

その中でなぜヴァイオリンでなければならない?

自分はなぜ魅了されている?

なぜこんなに苦労するものを続けている?

 

 

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~ヴァイオリンはとっつきにくいけれども、限りない魅力に溢れた楽器。

それを誰でも弾けるようになる方法を研究中。

物心ついて11歳からヴァイオリンを始めた私は、

自然にできたことはなく苦労の連続なので、

意識的に勉強してきたのが強みかも。~

 

 

答えはもちろん一つではなく、

いくつも浮かびます。

でも答えよりも問いの方が大事だと思える。

どれだけ多くの問いを自分の中に持てるか。

答えなんて時と共に変化し、真実と思うものは人の数だけある。

多様な問いを持ち、しなやかに考えていける方が面白いと最近特に思います。

心に響くものが、今の自分の答えのヒント。

 

 

魅了されている作品に込められた作曲家のメッセージを再現したいと願う。

謎解き(分析)自体が面白い作業。

でも、良い音自体に力がある。

今「なぜ音で治るのか?」ミッチェル・ゲイナー という本を読んでいるところ。

 

 

内容は音楽療法であり、少々スピリチュアル系でもあるけれど、

音がどれほどの力を持つのかを多くの症例を通して知ることができ、

「どんな音を出すのか」を考え続けるものにとっては

勉強になります。

 

 

音程の取り方一つにしても奥が深い。

倍音を豊かに含む共鳴する音はとてつもないパワーを持つ。

このところ演奏活動を控えていらっしゃるけれど

ものすごく豊かな音を奏でるチェロの友人が

長年ヴィアンネさんを支持しているというのを知り納得。

(木曜日、工房でばったり出会った)

探求は一生続きます。

 

 

次回のブログはコンサートの内容を。

なるべく今週中に何か書きます♪

 

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金曜日はようやく、つくばみらい市の「游なかにし」さんに

コンサートのチラシをお願いしに行くことができました。

ここはスリランカ紅茶専門店で、

美味しい紅茶がポットサービス(3杯分)。

ランチには焼きサンドが美味。

 

今回行ってみたところ名物の豪華あんみつのミニ版が

ランチに付けられるようになっていました♪

私が頼んだのは写真の小さい方。¥300

黒蜜は喜界島。小豆は北海道産。

と、素材にこだわりとことん手作りの優しい味。

シックな店内ではコンサートも行われるそうです。

 

我が家から車で7分。ピンクの壁が目印。

オーナーご夫妻の上品で温かい笑顔のおもてなしは

つくばみらいのサロン的役割を担っていると思う。

店内には奥様が集められたちりめん人形作家の竹本京さんのお人形が

展示されているスペースがあり、

季節ごとに違う作品が楽しめます。

 

 

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