いまさらの後日談、、
本当は演奏前にupしようと思っていましたが間に合わず、
その後も日々のことで後回しになって、今更の解説ですみません!
もう要らない、続きを書かなくていい、読まなくてもいいものかもですが、、。
でも、とりあえず!
今日友人が感想メールに「いつものトーク(解説)がなかったのが残念だった」と書いてくれたので、ならば、、、と。
お暇がある方はお読みくださいm(__)m
~8組のCDを聴きましたが、中でも私のお気に入りはアリーナ・イブラギモヴァとセドリック・ティベルギアンの演奏。
(だからといって、二人のように弾いたわけではない)
この二人はモーツァルト作品全曲を録音しているので、
CDは全部で10枚もある!
幼少の頃の作品まで網羅されていて、モーツァルトの作曲史を見る思いで聴いていました。
貴重! ありがとうです!~
今回演奏したK301 (KV293a)は、
モーツアルトが初めて楽譜出版をした作品群の1曲目。
つまり栄えある作品第1番。
当時は6曲セットというのがスタイルだったようで、
これも6曲のヴァイオリンソナタの中の1曲、しかも楽譜の扉を開けてすぐの位置。
ならば、神童モーツァルトが世に出す最初の出版物としての意気込みやいかに?と深読みしたくなります。
父親のレオポルトの最初の楽譜出版もヴァイオリンソナタだったそうですよ。
ヴァイオリンソナタやピアノソナタなら、楽器のたしなみを持つ貴族も楽譜を購入したことでしょう。
楽譜出版は記念碑的な要素、自分の力を世に広める役割も担いながら、
現実的には作曲家の収入源となる大事な仕事。
とは言っても当時の印刷技術やら校訂作業には不備が多く、
モーツァルトも相当な不満があったようです。
なので、直筆譜をもとにその後も何度も校訂が繰り返されていて、
私たちはじゃあどの版を採用する?から検討します。
書かれたのは、就職活動のために外遊していた21~22歳の頃。
1777年9月23日から1779年1月中旬までの期間。
なんと長い旅行! 大変!
生まれ故郷である地方都市のザルツブルグではなく、
都会、音楽の中心地でこそ活躍したいと願っていたモーツァルトは、
親戚のいるアウグスブルグに寄った後にまずはマンハイムに赴く。
ここには当時のヨーロッパで最も優秀な宮廷楽団が居たそうで、
その刺激は若いモーツアルトには相当な喜びだったでしょうが、
残念ながら就職活動はうまくいかない。
このマンハイムには7歳の頃にも父親と訪れているので、
オーケストラの指揮者件ヴァイオリニストであるカンナビヒとは旧知の仲。
そして、16歳の素晴らしいソプラノ歌手アロイジアに出会い恋をする。
モーツアルトを驚かすほどの実力の持ち主だったという。
マンハイムでは、カンナビヒの娘ロジーナのためにピアノソナタを、
アロイジアのためにも歌曲を書き、
他にも魅力的な女性のために数多くの作品を書き、ヴァイオリンソナタの筆も進む。
(乗ってるね!)
初めて父親と離れての旅で、独立したような気分も味わっていたことでしょう。
資料によるとK301のソナタは2月のマンハイムで作曲が開始されたとあります。
その後、手紙で父親のレオポルトにお尻を叩かれて泣く泣くマンハイムを発ち、
3月には最終目的地パリに到着。
しかし、パリの人々はもう子供ではないモーツァルトには興味を示さず冷たかった、、、。
パリを後にしてすぐにザルツブルグに帰るはずが、マンハイムに戻っている。
そして天才も失恋を経験する。
音楽では遥か遠くにいるモーツァルトがこの瞬間、人として身近に感じられる。
この歳は、就職活動の失敗、失恋、最愛の母の死と悲しいことばかり、、、。
傷心でザルツブルグに帰還。。。
ということで、この6曲のソナタ、
「マンハイムソナタ」とも「パリソナタ」ともいろいろ呼ばれます。
作曲された場所はマンハイムが4曲、パリは2曲。
けれども出版はパリ。
呼び名が交錯しています。
いつも自分の本番で弾く作品周辺の曲を聴きますが、
本番前日とホールに向かう車の中で31番の交響曲「パリ」を聴いていました。
上昇するエネルギーがすごい!
やる気満々、意気揚々、という言葉がぴったりに思う。
モーツアルトはパリでようやく成功したこのシンフォニーの喜びを
手紙に書いています。
「ぼくはもううれしくって、シンフォニーが終るとすぐにパレ・ロワイヤルに行って、
おいしいアイスクリームを食べ、、」(1778年7月3日付け)。
かわいい♪
私もアイスクリーム好きよ♪
パリで一つくらいイイことあって良かったね!
k301のソナタ第1楽章アレグロ コン スピリトゥオーソは、
春の日差しのように柔らかに始まるのも束の間、
休符の緊張感を含むヴァイオリンとピアノのユニゾンの上昇音型が、
ちょっとシンフォニックに響いてきびきびしている冒頭部分です。
短調に転じる展開部。
ピアノとヴァイオリンの旋律が対位法的に絡み合って面白い。
一瞬の減五度、減七度音程も多々あり、短い中にドラマがある。
第2楽章もアレグロ(快活にの意味)。
アレグロが二つ並ぶソナタは若い証拠かも?
もっと若い頃のモーツアルトにはありますが、
調べて見ると、これ以降のヴァイオリンソナタにはアレグロが並ぶ作品はありません。
アレグロが並ぶというだけでも、勢いを感じる。
その第2楽章は宮廷舞踊のメヌエット風ではなく、もっと軽やか。
大きなドレスや大きなかつらをつけてゆったりと踊るメヌエットではなく
(しかしメヌエットを踊るのはとてもややこしく難しい)
若い人が踊る曲という感じです。
なので、けっこう早めのテンポ設定で弾きました。
中間部はシチリアーノ風。
第1楽章と同じくここが特に魅力的。
和声の変化に富み、その分表情も豊か。
短い中に感情のドラマが溢れます。
(そう伝わっているといいなあ~)
そして最初の部分に戻り、最後に短いコーダが付いて楽しく終わる。
メデタシメデタシ♪みたいに。
当時演奏家は皆作曲もしたので、繰り返す時は変化をつけるのが常でした。
即興の名手なら繰り返す時は装飾の腕の見せ所。
私は即興なんてできませんが、
繰り返すところは1回目とは違うニュアンスを付けました。
考えて打ち合わせをして決めましたが、気が付かれたでしょうか?
もし気が付かれなかったとしても、
演奏する方が2回同じものを弾いて飽きている、、のではなく、
1回目と2回目で違うことをやっていて面白がっているというのが伝われば嬉しいです。
いつも多種類の演奏を参考にしますが、
どれも皆違う!
こんなに違っていいの?と思うくらい。
一番面白くないのが、いくら完璧でも平坦な音。
美しいけれども命が通っていないように思ってしまう。
整ったお人形みたい。
でも、まずは完璧に弾きましょう、と自分に言い聞かす。
ちょっと音がかすれたところあり、少々硬くなったところあり、、、。
もっと勉強しましょう。ハイ。
今一番お気に入りのモーツアルト演奏は、
イザベル・ファウストとアレクサンダー・メルニコフによるもの。
残念ながら今回弾いたK301は入っていないけれど、、、。
モーツァルト時代のフォルテピアノのポコポコした音は当時を忍ばせ、
息がぴったりで即興性にも富み(でも本当は相当な勉強がと思われる)
その瑞々しい演奏は今生まれて来たばかりの音楽のように非常に魅力的。
江幡先生からお借りしました♪
秋に王子ホールで演奏会があるようなので、
ぜひそれは聴きに行こう♪と今から楽しみです。
ちょうど王子ホールからチラシが届きました!
この日はドビュッシーから始まってフランクで終わるプログラム。
いきます♪ いきます♪
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