対比から生まれるダイナミズム!
まったく、誰が思いつくのでしょう。
こんなプログラム!
昨日の東京シティフィル定期演奏会は、そんな興奮の体験でした。
1曲目、オッフェンバックの「天国と地獄」序曲。
かの有名な運動会定番の曲、と言えばわかる?
チェロの美しいソロを含むゆっくりした前半部分の後、
後半はアップテンポのフレンチカンカンの賑やかな華やかさで締めくくる。
1曲目からブラボーが出る勢い。
今日もエネルギーが高い演奏が聴けそう♪と期待が膨らむ。
しかし次に来るのは、なんとシェーンベルグのヴァイオリン協奏曲。
シェーンベルグは前衛的かつ鋭角的な作曲家で、
癒しや心地よさとは無縁の世界を描く。
時は1934年。
彼はユダヤ系であったためナチスの手を逃れてアメリカへ亡命した年に作曲が始まったとオヤマダアツシ氏のプログラムノートにある。
シェーンベルグの代名詞は「12音技法」。
一度youtubeで予習してはみたものの,たった1回ではわからない、、、。
ムズカシイのよ。。(*_*)
生で聴いた作品の印象は、
艶のあるヴァイオリンソロが生きている人間の叫びや心の声を表しているかのようで、
(一緒に行った友人の一人はムンクの「叫び」を想ったとも)
ごつごつとした岩場の裂け目に必死に咲こうとする花を想ったりして聴いていました。
オケもよく弾くなあと感心でしたが、ソロはまた素晴らしかった!
キレのいいリズム、流れのあるボウイングを駆使して、
凛とした一輪の花のように舞台に美しく咲いていました。
これが、テクニックは素晴らしいけれど冷たい演奏だったら嫌になっていたと思うのに、
わけはわからないけれど始終引き込まれる演奏でした。
ただの真っ黒のドレスかと思いきや、
スリットの下には金色の生地が重なっており、
その衣装から私はクリムトの絵を思い出したりしていました。
シェーンベルグとクリムトは同じ時代、ウィーンで生きた人でしたね。
ソリストの南紫音さんはとてもスレンダーな身体つきながら、
右腕の上腕二頭筋はしっかり鍛え上げられ、
鍛錬のたまものがその腕からも伝わって来た。
わざわざこの曲をレパートリーに入れると言うのは、
作品に対する共感がないと有り得ない。
かのハイフェッツも初演を断念したほどの難曲ながら、
南さんは作品の本質に迫ろうとする熱演。
困難な曲は困難な現代とも重なり、
それを生き抜く覚悟を音にした30歳の美しいヴァイオリニストに
会場の拍手は鳴りやまなかった。
後半は、スッペの作品集。
今年はオッフェンバックとスッペの生誕200年らしい。
つまり、二人は1819年生まれ。
古き良き時代の音はホっとする。
指揮者の下野竜也氏は、始終にこやかに楽しそうに、そして伸びやかにタクトを振る。
こういう指揮ならオケも楽しく弾けたのでは?
序曲「ウィーンの朝、昼、晩」は始めに憂いを帯びたチェロのソロがあり、
大変魅力的。
12月7日にナチュロアロマチカ20周年記念で守谷に来ていただいた
シティフィル首席奏者長明氏の温かく美しい音がホールに拡がる。
一緒に聴いた一人は「マホガニーのような音♪」とうっとり、、、。
そうこの日は、12月7日を聴いて感動した4名と、
残念ながら聞けなかった2名の計6名で定期演奏会を楽しんだのでした♪
続く「怪盗団」序曲、「美しいガラティア」序曲、「軽騎兵」序曲も
分かり易く明るく親しみやすい響き。
どれもブラボーが出てくる豪華さ。
人間の喜怒哀楽が詰まっていて、
素直に共感できる。
分かり易いエンターテイメント系だからって、ただ軽いわけではなく、
本気で人を喜ばせようと作曲家が書いた作品だと伝わって来る。
コンサートの流を聴きながら、まるで人生のようだ、、、とも思っていた。
苦悩も叫びもしなやかさもごつごつとしたものも、
多くの究極の質感が詰まったシェーンベルグには、
深層の悩みや苦しみがあったりするかもしれないけれど、
明るくお気楽に感じるスッペやオッフェンバックの音楽にだって、
日常生活を元気に生きるためのエネルギーと、
作曲家からのエールが詰まっている。
方向性は正反対としても、
作者の本気の本気のエネルギーが盛り込まれた作品なら、
時代を経ても生き続ける。
どちらかだけだと、息苦しいだけだったり、物足りないかもしれない。
苦労があってこそ小さな幸せが大きく感じられ、
悲しみを経てこそ喜びが倍増するように、
作品は見事にお互いを引き立てあっていて、
大きな対比から生まれるエネルギーに、
私も生きる力をたっぷりいただいた。
芸術ってなにもムズカシイもののことを指すのではなく、
浄化してくれる力があるもののことを言うのだと思う。
この日はまさにそういう力を体験させていただいた。
絶妙のプログラム構成に加えて、
毎回変わらず真摯に演奏に取り組むシティフィルならではの音が、
期待を裏切ることなく聴衆を満足させてくれる。
「軽騎兵」の弦のユニゾンは、
ここまで熱い音を聴かせてくれるのか!?と驚くほどであり、
各ソロもとても魅力的。
その中でも私のご贔屓は
何といってもチェロ首席の長明氏であり、セカンド首席の桐原氏。
音楽に身を捧げる演奏にはいつも心打たれます。
コントラバス首席奏者も生き生きと弾いていらっしゃって目を引いた。
他の方もね。
音はもちろん、見ても楽しむ2階サイド席なのです。
一緒に並んで聞いた智恵さんも大満足の様子で、よかったよかった♪
誘ったのに、イマイチ、、、では申し訳ない。
彼女とは2回目のシティフィル定期演奏会通い。
お昼を食べながら語り合い、ホールに向かい、同じ空気の中で音楽を楽しむ。
一人で聴くより、友達とならもっと嬉しい。
しかし、もっとお客さん集まらないのかしら?といつも思う。
こんなに良い演奏しているのにね。
もったいない!
定期演奏会には珍しいアンコールが始まった。
1曲目の「天国と地獄」の最後のフレンチカンカンの部分。
まるで、映画が終ってタイトルロールが流れながら、
それまでの場面を回想するかのよう。
しかし始まって間もなく、指揮者は舞台から去る。
あら?指揮者なしでも演奏できるってことの証明?
と思っていたら、指揮の下野竜也氏が大きな金色のボンボンと赤い帽子を持って
再登場。
さらに、コンサートマスターとセカンド首席奏者を誘って、
舞台の最前列で踊り始める!!
客席はもちろん、オーケストラの皆さんも爆笑!
打ち合わせはなく指揮者のいたずらだったそうで、、、。(^^♪
何とおちゃめで楽しい演出でしょう。
しかも赤い帽子は、運動会で被る紅白帽でした♪
あ~楽しかった♪
大サービスまで、本当にありがとうございました!
~アンコール終了後のオペラシティ。お疲れさまでした!~
私も維持会員4年目のシーズンに入ります♪
これからも楽しみに応援して参ります!
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 4月21日茨城桐朋会演奏会(2019.03.12)
- 対比から生まれるダイナミズム!(2019.02.17)
- モーツァルトの魔法に(2019.01.19)
- 1/18 つくば朝のサロンコンサート(2019.01.07)
- 初めてゴッホに出会う(2017.12.20)
森 裕美様
素晴らしいオーケストラの楽団なのですね!
来年の定期演奏会の時は、ぜひご一緒させていただきたいです❣️
Rosace Kumi
投稿: Rosace Kumi | 2019年2月19日 (火) 04時00分
コメントいただきありがとうございます!
そうなんです。とても良いオケなんですよ~♪
私は毎回行ける訳ではないのですが、行ける時は2階サイド前列(ステージ上)の席を取ることが多いです。
ここはオケメンバー、指揮者の表情、やり取りが見え、音も一つずつが聴こえて、発見が多いのです。
お互いにわかるように目印付けて会場でお会いして、感想をシェアできたら楽しいでしょうね♪
森 裕美
投稿: Rosace Kumiさま | 2019年2月19日 (火) 10時06分
Rosace Kumiさま
こんにちは。
4月13日(土)14時開演のオペラシティでの第324回定期演奏会に参ります。
プログラムは、モーツァルトの魔笛序曲から始まり、人気の森麻季さんがソリストを務めるR.シュトラウスの4つの最後の歌、最後はブルックナーのシンフォニー第1番と魅力的なもの。
指揮は常任指揮者の高関健氏。
ご興味ありましたらいかがでしょうか?
森 裕美
>Rosace Kumiさん
>
>森 裕美様
>
>素晴らしいオーケストラの楽団なのですね!
>来年の定期演奏会の時は、ぜひご一緒させていただきたいです❣️
>
>Rosace Kumi
>
投稿: 森 裕美 | 2019年3月29日 (金) 15時22分