シーモアさんの言葉と音楽
シネスイッチ銀座でやっている「シーモアさんと、大人のための人生入門」。
ピアニストの友人がFBでシェアしてくれて、すごく良さそうだったので、
この日なら行ける!という日を探して、早速観て来ました。
インタビューと演奏のみの、完全なドキュメンタリー。
派手なエンターテイメントの要素はなく、ある意味すごく地味な、
だからこそ大変味わい深い映画でした。
このようなものを体験すると、言葉になるまでに時間がかかります。
つまり表面的でない多くの情報が、どのように自分の中に沈殿し、
底に沈んだものがどういう姿をしているのか水が透き通るまで見えない。
言葉が出て来ないのです。
シーモア・バーンスタインさんは、御年89歳になられるNY在住の現役ピアノ教師。
50歳で現役を引退するまでは、
一流のコンサートピアニストとして演奏活動を行って来た人。
早い引退の理由に、音楽の商業的な側面に嫌気が差したこと、本番(暗譜)の恐怖、そして創作活動(作曲)の時間が足りないことの3つを、映画の中で語っていました。
つやつやとした福々しいお顔と身体の動き。(可愛いおじいちゃん♪なんて言ったら失礼?)
何と生き生きとした89歳なのだろうか!と感嘆して見ていました。
こんな風に歳を重ねたい!
若さの秘訣は?
やっぱり音楽?
若い人たち(生徒さん)と交流しているから?
自分らしく生きているから?
それとも、、、?
書き留めておきたくなる多くの珠玉の言葉たちも素晴らしかったけれど、
何よりもシーモアさんの奏でるピアノのまろやかな優しさ、
心に降りてくる音の深さが身に沁みました。
彼のピアノを聴いていたら、本番前「千の言葉よりも、音楽の力を信じましょう」と
言ってくれた友人のことを思いだしていました。
どこを開いても、深い分析、鋭い考察に感嘆し、温かい気持ちが拡がります。
宝物の一冊になりそう。
シーモアさんの人となりを一言でいうと「神様のような人」なのだそうです。
人のことと自分のことを重ねていつも親身な人。
素敵な方ですね~。
シーモアさんが大事にしているのは「献身」。
私も、音楽への献身が伝わってくる演奏を聴くことを、何よりも喜びと感じます。
それは、作曲家への敬意と共感であり、音楽の神様への賛美でもあり、
会場の聴衆とかけがえのない瞬間を共にすることの感謝、
音楽を奏でることそのものへの感謝でもあるから。
「才能の差よりも、身を捧げて生きている度合いの差の方が結局は大きく、
個人にとっては、一生を送る甲斐がある」と。
~身を捧げて生きる~ なんと美しいことでしょう。
もう一つシーモアさんが大事にしていることは、「シェアすること」
「演奏するとは、感動を他人と分かち合うことなのだ」ということ。
深く頷きたくなりました。そうです。そうなんです。心からそう思います。
また一つ 理想の音が増えました。
あんな包容力のある温かい音を。
あんな優しく大切な音を。
あんな風に和声の中で呼吸して、
和声の感情に導かれるまま自然に、
あんな風に作品に身を捧げて情熱的に奏でたい。
瞬間で消えていくように思える音楽が、
永遠のものだと信じられる音。
ずっと耳の奥で、身体の中で響き続けています。
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