24日土曜日の夜、流山おおたかの森で映画「ボレロ 永遠の旋律」を友人と見てきました。
映画『ボレロ 永遠の旋律』公式サイト
https://gaga.ne.jp/bolero/
土曜日の夜になぜ遊びの用事で出かけられるのかと言うと、
この日は娘の月に一度のショートステイの中日であり、
夫も趣味のサークルの飲み会があり、
私1人家に居なくても良い日だと気がついたから。
フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの「ボレロ」が映画になっていると知ったのは、今月上旬のこと。
そういえば、最近映画を見に行っていない。 昨年の夏以来!
大人になってからも、8月にはどこか「夏休み」という記憶が残っているもので、
何か楽しい遊びが欲しくなります。
映画以外にも、友達に会ったり、家族で水族館に出かけたり(これは大渋滞で入れずに諦めて、近くの漁港で海鮮丼を食べて帰ってきましたが)、
それに何よりCD制作。
そしてチラシ作りやらなんやらのPC作業の山。(私にしては)
と、いつもとは違う1ヶ月でした。
~娘をショートステイに送った帰りに撮った稲穂。田んぼは秋です~
守谷では上映されていないので、1番近いのは流山。
でも、平日私が見に行って帰って来られる時間内には上映がない。
そこで思いついたのがこの日です。
映画は作り手に委ねられているので、史実を歪められていないか?
どんな作り方をされているのか?
見終わるまでは、果たして行って良かったかと思えるかどうかわかりません。
だから、誘うのにも少し勇気が要ります。
しかしこの映画は、ラヴェルの本国フランスの女性監督アンヌ・フォンテーヌによるもので、
作曲家への愛とリスペクトが伝わる上質な作りでした。
以下、ネタバレも含みます。
ラヴェルは一生独身で通した人でしたが、映画では監督が創作したミシアという女性とのプラトニックな愛も描かれていました。
ミシアは実在の人物で、ラヴェルから「ラ ヴァルス」を献呈されている彼の友人であり、ピアニストだそう。
たしかに二人でマ・メール・ロワを連弾する場面が映画に出てきましたが、
それを見てもピアニストとは思わず、、、、。
芸術家を応援した、つまり芸術家のパトロンでもあったようです。なるほど!
ミシアを演じたドリア・ティリエの魅力的なほほえみは、ラヴェルのミューズであったと言われても
なるほどと思ってしまいそうです。
ラヴェルとミシア二人の場面はこちら↓
『ボレロ 永遠の旋律』本編映像_ラヴェルとミシア_君に音楽を捧げたい
https://youtu.be/lp6QRdDxkhg?si=ZnuQksIGXvU7DD1b
さらに、晩年のドビュッシーから彼の作品の教えを請うたピアニスト マルグリット・ロンもラヴェルの近しい人物として描かれていて、
頭の中に?マークが飛び交いましたが、
マルグリットはラヴェルのピアノ協奏曲の初演者であり、
彼と各国を演奏旅行で回ったと言うことも
自宅に帰って調べてからわかりました。
さらに、若手ピアニストの登竜門として名高いロン・ティボー国際コンクールを創設したのも、彼女。
ティボーとも親しかったようですしね。
なるほど、なるほど~がいろいろ出てきました。
一つの映画を通して知識とイメージが拡がり、それらのたくさんのつぶつぶが集まって、
20世紀前半のフランス音楽の脳内地図がまた少しできた感じです。
マルグリット・ロンは、ルバートの多いロマンチックなコルトーと同じ時代のピアニストながら、演奏スタイルは間逆で、
作曲家の意思を尊重しテンポやリズムを守ったどちらかと言うと現代的な演奏をしたようですね。
と、外堀の話しが先行してしまいましたが、主人公モーリス・ラヴェルは、
とてもダンディで美意識が高く、繊細で誠実な人物として描かれていました。
確かに、彼の音楽からはそれが聞こえて来ます。
ラヴェルは音楽を何より一番とした。
頭の中にはいつも音楽があり、不眠症に悩まされていたことも有名です。
彼が音楽を追いかけるよりも、音楽の方が彼に取り付いていたのかも。
それによる素晴らしい作品の数々。
今再び、ラヴェルの作品たちを聴きたい気持ちでいっぱいになっています。
ご本人の写真を見ても、ダンディで優しそうな品の良さが素敵ですよね。
ラヴェルのピアノ協奏曲の第二楽章は、左手がゆったりとした3拍子のワルツのリズムを刻み、
永遠の時の中にいるような気持ちになります。
全体は静かでシンプルなのに和声はたくさんの不協和音を含んでそれがまたとても美しく印象的で、
彼の複雑な内面世界を描いているようにも感じ、
旋律はなめらかで控えめで優しい。
それぞれの作品の中で、彼は今でも生きている。
ラヴェルが実際に晩年暮らした家を使っての撮影で、
それだけでもクラシックファンとしては大変興味深いです。
↓がラヴェルが晩年の16年を過ごした家について書かれた記事です。
パリから離れた田舎町モンフォール・ラフォーリーにあるラヴェルの家には、
彼が手掛けた日本庭園もあるそう!
https://ontomo-mag.com/article/column/maison-de-ravel202204/
謎なのは、音楽に関すること以外のラヴェルについてはあまり描かれていなかったこと。
スキャンダルが多い他の作曲家とは違い、
人間関係のいざこざもなく、ただただ純粋に音楽の世界に生きた人。
他人に優しかったのでしょうね。
完璧主義で緻密な仕事をしたラヴェルは、音楽以外のものに多くを求めなかったのか。
作曲家としての登竜門の「ローマ大賞」に5回も落選。
ラヴェルの新しい音楽は、頭が古い審査員たちには理解できなかったからなのですが、
それでも、自分の信じるもの、
これが自分の音楽 と思うものを否定されることの辛さを思うと、苦しくなります。
作曲家ほど大変な職業は無い。
インスピレーションがわかなければ苦しみ、
自信作ができても酷評され批判されればまた傷つき、
特に社会的な生き物とされる男性としては、
より深い傷を負うのではないでしょうか。
ラヴェルに限らず作曲家は皆、そのような道をたどっていますね。
その心血注いだ作品を演奏させていただける有り難さ。
だから、私も自分がどうのではなく、作品の素晴らしさを聴いて欲しい、
作品の素晴らしさを伝えたいと思うのです。
一説によれば、ラヴェルはアルツハイマーになったと言う話もありますが、
晩年、自分の名前も書けなくなった、自分の作品もわからなくなった。
頭の中に音楽はあるのに、それを書き留めることができない苦しみ。
こんな素晴らしい作品を書いた人に、このような過酷な最後が待っているなんて、、、、。
でも映画では、彼を取り巻く女性たちは変わらず愛と友情で寄り添っていたことが、せめてもの救いに思いました。
そして私にとっては、映画の作りがどうのではなく、
とにかく音楽が素晴らしかった!!!
ラヴェルの生涯に輝く作品たちが、極上の演奏で流れます。
ラヴェルの人生を追いかけながら、
彼の作品を聞くことができる喜びに浸っていました。
各場面でラヴェルの作品が聴こえてくるたびに、どこか懐かしい人に会えたような
なんとも言えない気持ちが込みあげてきました。
思わず、弦楽四重奏曲の演奏は誰であったか?(→パレナン弦楽四重奏団)
エンディングのクレジットのバックで流れるピアノ協奏曲の第2楽章は誰が弾いているのか?(→サンソン・フランソワ)
知りたくて、サウンドトラックの目次も探しました。
映画「ボレロ 永遠の旋律」オリジナル・サウンドトラック –
https://ml.naxos.jp/album/5054197954207
映画『ボレロ 永遠の旋律』オリジナル・サウンドトラック【輸入盤】」
https://wmg.jp/alexandretha/discography/29080/
ラヴェルの名曲の触りを詰めたサウンドトラックから、
モーリス・ラヴェルを知る旅を始めるのもお勧めです!
来年2025年は、ラヴェルの生誕150年の年です。
公開から今日の時点で2週間強。
もう少しの間、映画館で見られると思いますよ♫
個人的には、「ラ・メール・ロワ」は、昔九響にいた時代のある夏の演奏旅行で何度も弾いたことや、
小澤征爾氏がボストン交響楽団と福岡に来日した際に行ったときのプログラムに「ラ・ヴァルス」が入っていて、
あの時の小澤さんは指揮台の上でまるでワルツ踊っているかのようだったお姿を、40数年経ってもまだ鮮やかに思い出します。
もちろん、ボレロも何度も演奏して、あの曲は作りからして必ずブラボーをいただける曲でしたね。
ヴァイオリンは同じ伴奏を繰り返してつまらないのだけれど。
(なんて言ってはいけない!)
私にとっての音楽は、タイムスリップの玉手箱でもあり、
今生きている呼吸や心臓の躍動や血液の流れのようなもの。
音楽は素晴らしい✨と改めて思った映画でした。
ここまでスマホの音声入力をPCに動かして、今日は頑張ってブログ二つ。
娘がショートステイから帰って来てお昼寝している間に二つ書いて、
夜写真を選んでアップです。
またブログに遊び来てくださいね。
~お隣さんの柿も青い実をつけています~
お読みいただきありがとうございました。
<information>
*私たちヴァイオリンとピアノのデュオ「Luna Classica」のYouTubeチャンネルはこちら。
https://www.youtube.com/@lunaclassica3529
チャンネル登録もよろしくお願いします!
*2作目CD「La Vieいのち」に収録したリリ・ブーランジェの「夜想曲」をまるまる演奏動画としてアップしました。
こちらもぜひご覧ください。
https://youtu.be/S2qYkylfYJg
*2枚目のCDに収録のブラームスのヴァイオリンソナタ第1番の冒頭部分を、下記YouTubeでお聴きいただけます。
https://youtu.be/_g0WW0caJMM
*Luna ClassicaのCD第1作目「祈り」はこちらでご視聴、お求めいただけます。
https://www.tunecore.co.jp/artists/LunaClassica
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